【チュウゴクアミガサハゴロモ(Lycorma delicatula)】
チュウゴクアミガサハゴロモ
(Lycorma delicatula (White, 1845)) は、
カメムシ目アミガサハゴロモ科に属する吸汁性の外来害虫です。
近年、日本での確認例が増えており、果樹への影響が懸念されています。
1. どこから来た害虫なのか(起源・侵入の歴史)
● 原産地
原産は 中国を中心とする東アジア。台湾・韓国・インド北部・ベトナムなどにも分布します。
日本に侵入した個体群の遺伝子解析では、
北陸地方の個体群が中国北西部の系統と近縁であることが示されています。
● 世界への拡散
– 韓国(2004年):初確認後、短期間で全国に拡大
– アメリカ(2014年):東部を中心に広がり、ブドウ産業に深刻な被害
– 日本(2009年):石川県・福井県で初記録
参考 YouTube 平野農園channel
2. どうやって日本に入ってきたのか(侵入経路)
主な侵入経路は 卵塊の付着 と考えられています。
– 木材
– 梱包材(パレット・木箱)
– コンテナ
– 車両・建材
– 石材
卵塊は灰色で目立たず、乾燥にも強いため、
検疫をすり抜けやすいことが問題視されています。
3. なぜ日本で急増しているのか
日本では長らく北陸地方に分布が限られていましたが、
近年になって他地域での確認が増えています。
増加の背景には:
– 天敵がほとんどいない
– 都市部のニワウルシ(Ailanthus altissima)が繁殖基地になる
– 卵塊が物資とともに移動しやすい
– 日本の気候でも越冬可能
といった要因が挙げられます。
4. ブルーベリーが狙われる理由
チュウゴクアミガサハゴロモは、
70種以上の植物を吸汁する雑食性害虫です。
ブルーベリーが被害を受けやすい理由としては:
– 樹皮が薄く吸汁しやすい
– 樹液の糖度が高い
– 排泄物がすす病を誘発しやすい
– 樹勢が落ちると回復に時間がかかる
などが考えられます。
5. 被害の実態
海外および国内の報告から、以下のような被害が知られています。
– 大量吸汁による 樹勢低下
– 排泄物による すす病の発生
– 光合成の低下
– 枝枯れ
– 果樹の収量・品質低下
日本では大規模被害はまだ報告されていませんが、
分布拡大に伴い 今後の影響が懸念されています。
6. 日本での分布(2020年代)
– 2009年:石川・福井で初記録
– その後、
– 石川
– 福井
– 大阪
– 岡山
– 兵庫
– 愛知
– 岐阜
– 奈良
– 富山(2022年新記録)
など、複数県で確認例が増加
分布はゆっくりですが確実に広がっており、
今後も拡大する可能性が高いと考えられています。
7. 防除方法(科学的根拠のあるもの)
● 卵塊の除去(最重要)
卵塊1つで30〜50匹が孵化するため、卵塊対策が最も効果的。
● 物理的除去
– 成虫・幼虫の捕殺- 幹への粘着トラップ
● 防虫ネット
若木はネットで覆うと被害が大幅に減少。
● 薬剤
海外では一部薬剤の効果が報告されていますが、日本では登録状況に注意が必要。
● 寄主植物(ニワウルシ)の管理
周辺のニワウルシを減らすことで発生源を抑制できます。
8. 日本の果樹農家が警戒すべき“被害植物”一覧(実用版)
チュウゴクアミガサハゴロモは多くの植物を加害しますが、
果樹農家にとって重要なのは “園地に影響する植物だけ”。
以下は、
日本の果樹農家が実際に警戒すべき植物を厳選したリストです。
🍎 (A)果樹そのもの:直接被害が出る可能性が高い
– ブドウ(最重要)
– リンゴ
– ナシ
– モモ
– サクランボ
– カキ
– イチジク
– ブルーベリー
🌳 (B)園地周辺に生えやすい樹木:侵入の足場になる
– ニワウルシ(最重要)
– カエデ類
– クルミ類
– ヤナギ類
– ハリエンジュ(ニセアカシア)
– ポプラ
🌿 (C)雑草・つる植物:中継地点になる
– クズ
– ヤブガラシ
– スイカズラ
– ヤマブドウ
🔥 (D)危険度まとめ
最重要(発生源になりやすい)
– ニワウルシ
– ブドウ
高リスク(園地周辺にあると危険)
– カエデ
– クルミ
– ヤナギ
– ハリエンジュ
– カキ
– イチジク
– サクランボ
– モモ
– ナシ
– リンゴ
中リスク(中継地点)
– クズ
– ヤブガラシ
– スイカズラ
– ヤマブドウ
9. ブルーベリー農家が今すぐできる対策
– 樹の幹・支柱・鉢の裏を定期的に観察
– 若木はネットで保護
– 卵塊を見つけたら早期に除去
– 周辺のニワウルシを伐採
– 近隣農家と情報共有
10. まとめ
– チュウゴクアミガサハゴロモは 東アジア原産の外来害虫
– 日本では 2009年に初記録
– 近年、複数地域で確認例が増加
– ブルーベリーを含む果樹への影響が懸念される
– 卵塊の除去と寄主植物の管理が最重要
– 園地周辺の植生を把握することが、侵入予防の第一歩
📚 参考
– Nakashita et al., 2023. Scientific Reports
– 韓国農業振興庁(RDA)
– USDA(アメリカ農務省)
– 日本国内の自治体・研究機関の発表資料


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