じいちゃんのコンテナ|果樹園の想いがブルーベリーへ巡るまで

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じいちゃんのコンテナ|当サイト園主の想い

20年も前、大阪にいたころのことだ。
母方のじいちゃん家から、大量のラ・フランスが届いた。

ラ・フランスは一気に熟す。
1ケース16個。
数日で食べきらないといけない。
うまい、旨すぎる。
幸せなのに、どこか拷問めいていた。

じいちゃんのラ・フランスだ。

じいちゃんは果樹園をしていた。
ラ・フランス、リンゴ、さくらんぼ、もも。
山形は果物王国で、じいちゃんの畑はその象徴みたいな場所だった。

時期になると、コンテナには果物がどっさり積まれる。
痛んだ実は「クズだ」と言って自宅用にくれる。
でも、その“クズ”がまた、驚くほどおいしい。

樹にはセミの抜け殻。
井戸水はギーコギーコと音を立てて上がってくる。
真夏の暑さも、果樹園の中ではやわらかな日陰に変わる。

じいちゃんの果物は、市場でも高値で売れていたという。
本当にうまかった。

じいちゃんは年のせいもあり、果樹園をやめた。

ラ・フランスやリンゴ、サクランボの樹は年々その姿を消していった。
腰が曲がったじいちゃんも、畑で細々と野菜を作る生活に落ち着いた。

今はもう、なにもない。
何一つない。

じいちゃんは天国で果樹園をやっているらしいと、天使たちから風の噂で聞いた。
だから、あの畑にはもう何も残っていない。

コンテナを除いて。

ある日、おばちゃんから「コンテナを使ってくれないか」と頼まれた。
役目を終えたかのようにたたずむ倉庫の中に、眠っていた大量のコンテナのことだった。
かつてじいちゃんが果樹の収穫に使っていたものだった。

コンテナを車の荷台いっぱいにして持ち帰った。
これを使って何かできないかと考えた。
庭の畑にブルーベリーがあった。

そのじいちゃんのコンテナには、今、ブルーベリーが植えてある。
生きる力の塊みたいな、あのブルーベリーが。

子どもたちは、そのコンテナに実った大粒のブルーベリーを、
笑顔でほおばっている。

コンテナのことなんて、なにも知らずに。
でも、それでいいんだ。
それで、ほんとうにいい。

命や想いは、そうやって静かに巡りめぐる。

今、隣で眠る乳飲み子の娘も、
いつかきっと、何も知らずにブルーベリーを食べるようになるんだろう。

おまえの、ひいじいちゃんの想いを。

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この記事を書いた人

山形県にて小規模栽培にて高品質なブルーベリー苗木栽培を行なっています。

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