しくじりの概要
私が初めてブルーベリー苗木を植え付けた時の話だ。庭に植え穴を掘り、ピートモスと鹿沼土を必要量そろえ、準備は整っている──と、当時の私は本気で思っていた。
今思えば、この「整っていると思っていた」という感覚こそが、初心者の愚かさの頂点だった。
ピートモスは「事前に湿らせておく」という知識だけは持っていた。しかし植え付け直前になって、重大な事実に気づいた。
用土を混ぜる箱(トロ箱)がない。
ここで普通の人間ならホームセンターへ走る。
しかし当時の私は、自分の脳みそを過信しすぎていた。
なぜか「自分は園芸の天才かもしれない」という謎の万能感があった。
そして私は、園芸人生最大の愚行を思いつく。
「袋に直接水を入れれば勝手に混ざるだろう♪」
この瞬間、私はピートモスの物理法則に真っ向から大ケンカを売った。
しかも楽々勝てると思っていた。愚かすぎる。
ピートモスの袋に切れ込みを入れ、ホースを突っ込んで注水した。
すると──
袋の中でピートモスと水が完全に分離した。
振っても混ざらない。揺すっても混ざらない。そこで気づいてやめておけばまだよかったが、当時素人の私は、どこまで水を入れたらいいか分からず、愚かにも大量に注水してしまったのである。
袋の中では、上層に乾燥ピートモス、下層にドロドロの水という二層構造の地獄沼が誕生した。
袋を持ち上げると内部で「タポン…タポン…」と鈍い音がした。
用土のはずなのに液体の音がする。
この世で一番聞きたくない音である。
しかも重すぎて持ち上がらない。
私はこの“分離ピートモス水爆弾”を植え穴まで引きずり、袋を破って植え穴にぶちまけ、そこで混ぜるという暴挙に出るしかなかった。
ブルーベリーの植え付けという神聖な儀式が、なぜ袋破りの土木作業になってしまったのか。
理由は簡単だ。
私が愚かだったからである。
初心者はピートモスの水分ステージを一度体験すべき
ピートモスは、乾燥状態では水を弾き、湿ると水を抱え込み、過湿では泥化し、さらに水が多いと液体状になる。
この性質は文章で読んでも理解しづらく、実際に触ってみないと絶対に感覚が掴めない。
初心者は一度、ピートモスにどの程度水を含ませると
「軽く湿る」「しっとり湿る」「泥になる」「ドロドロの液体になる」
のかを実験して、触感で理解しておくべきである。ピートモスは数字ではなく“手の感覚”で扱う資材だからだ。
この“水分ステージの体験”をしていない初心者は、
ほぼ確実に私と同じしくじりをすることだろう。
ピートモスは、触って初めて「資材」になる。触らなければ永遠に「謎の茶色い綿」だ。
このしくじりがブルーベリーに及ぼした影響
ブルーベリー自体には致命的な影響はなかった。植え穴で最終的に鹿沼土と混ぜ直したため、用土の物理性はギリギリ許容範囲に収まった。
ただし、袋内で水と完全分離した状態は、ピートモスの疎水性と吸水性の悪いところだけを最大化した状態であり、扱いとしては最悪だった。
ブルーベリーは何も悪くない。
悪いのは、袋に水を入れれば勝手に混ざると思った私の脳みそである。
植え穴にぶちまけられたピートモスは、さぞ驚いたことだろう。
「え…ちょ、まっ…なんで袋ごと来るの…?」
ブルーベリー先輩の困惑が聞こえた気がした。
いや、あれは確実に聞こえていた。
私の愚行に対する、無言のツッコミだった。
ではどうしたらよかったのか
答えはシンプルだ。
トロ箱を用意しておくべきだった。
ピートモスは少量ずつ水を加え、ほぐしながら均一に湿らせ、鹿沼土と混ぜて通気性を確保するという手順が必要で、袋内で勝手に混ざるような代物ではない。
知識の半分だけを握った初心者が最もやりがちなしくじりである。
「知識を半分だけ持っている状態」は、時に「知らないより危険」だ。
結論
ピートモスは袋内では混ざらない。
水を入れれば勝手に混ざるという発想は危険である。
トロ箱は必須であり、用土は丁寧に湿らせるべきである。
初心者はまず「ピートモスは乾燥状態だと水を弾く」という性質を理解するのが正解だ。
そして、ピートモスの袋にホースを突っ込んで注水するという暴挙は、二度とやってはいけない。
あれは園主の尊厳が愚かさで満たされタポンタポンになる。


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