質問:葉を取り除くべきケースと、葉を残すべきケースの区別が付かないから教えて
ブルーベリー栽培をしていると、「葉を減らした方が良い」「葉は残した方が良い」という正反対の意見を見かけます。
実際に株が弱っている場面では、葉を減らして負担を軽くするべきなのか、それとも光合成能力を維持するために残すべきなのか判断に迷います。
葉を取り除くべきケースと、葉を残した方が良いケースの違いを教えてください。
回答
結論から言うと、葉を取り除くかどうかは葉の状態だけでは判断できません。
本当に見るべきなのは根の状態であり、さらに言えばその根が「急性的に弱った根」なのか、「慢性的に弱った根」なのかを見極めることが重要です。
急性的な根の障害では葉を減らす判断が有効になる場合があります。一方で慢性的な根の衰弱では、葉を取り除く判断そのものを避けた方が良い場合があります。
回答の理由
この話がややこしい理由は、「弱った株は葉を減らすべき」という説明も、「弱った株は葉を残すべき」という説明も、どちらも一定条件下では正しいからです。
問題は、多くの場合「株が弱った」という結果だけを見て判断していることです。
実際の栽培では、根が弱っているという事実よりも、「その根がどうやって弱ったのか」の方が重要になることがあります。
急性的に根を失った株では葉を減らす意味がある
例えば昨日まで元気だった株を想像してみてください。葉色も良く、新梢もよく伸び、根も活発に活動していた状態です。
ところが、移植時の根切りや倒伏による根傷みなどによって、短期間で根の大部分を失うことがあります。またコガネムシ幼虫による食害も一日で発生するわけではありませんが、ある時点を境に根量が急激に不足し、樹勢が短期間で崩れることがあります。
こうしたケースでは、根だけが急激に失われる一方で、地上部はまだ元気な状態を維持しています。葉は健康で蒸散能力も高く、光合成能力も十分残っています。
しかし問題は、根がそれに見合った吸水を行えなくなることです。健康な葉は盛んに蒸散を行いますが、根は十分な水分を補給できません。すると樹体内部の水分バランスが崩れ、枝枯れや乾燥障害へ発展していきます。
このような急性障害では、葉を整理して蒸散量を抑える判断が有効になることがあります。
また、この段階の株はそれまで健全に育っていたケースが多く、幹や枝の内部には貯蔵養分が十分残されています。葉を減らす目的は根を直接再生させることではなく、水分消費を抑えながら、その貯蔵養分を使って樹が根の再生を図る時間を確保することです。
つまり急性障害では、葉を減らすことで生存率を高めるという考え方が成立します。
慢性的に弱ってきた株では葉を残す意味がある
一方で、今回とはまったく逆の考え方を取るべき場合があります。
それが慢性的な根の衰弱です。
例えば、
・長期間の根詰まり
・過湿環境の継続
・夏場の根傷み
・酸素不足による根の衰弱
・長期間にわたる樹勢低下
このような状態では、根だけが弱っているわけではありません。葉も弱っていますし、枝も弱っています。株全体が長期間にわたり少しずつ衰弱している状態です。
急性障害とは違い、地上部だけ元気という状況ではありません。
この段階の葉は、見た目こそ悪くなっているかもしれません。しかしその葉は、その株が今も持っている数少ない光合成能力の一部です。
たしかに慢性衰弱株の葉は健全株ほど高い光合成能力を持っていないでしょう。しかし光合成能力が低下しているからといって、それが不要になるわけではありません。
むしろ慢性衰弱株では、その限られた光合成能力こそが回復への生命線になる場合があります。
葉は蒸散器官であり、エネルギー工場でもある
葉というと蒸散ばかりに注目されがちです。確かに葉は水分を消費します。だから弱った株を見ると、葉を減らした方が良さそうに見えます。
しかし葉にはもう一つ極めて重要な役割があります。
それが光合成です。
葉は糖を生み出す工場であり、その糖は幹や枝に蓄積されるだけではありません。根へ送り込まれ、根の維持や新根の形成にも利用されます。
さらに葉は単なる光合成器官ではなく、植物ホルモンのバランスにも関与しています。そのため葉を大量に除去すると、光合成能力だけでなく樹体全体の生理的なバランスにも影響を与える可能性があります。
慢性的に弱った株では、
葉を除去する
↓
光合成能力が減少する
↓
根へ送られるエネルギーが減少する
↓
回復力そのものが落ちる
という流れが起こる場合があります。
だから私は慢性衰弱株に対して、安易な葉の除去には慎重になります。
私ならこう判断する
もし昨日まで元気だった株が移植失敗やコガネムシ被害などによって短期間で大きく根量を失ったのであれば、私は葉を減らす方向で考えます。
その方が蒸散を抑えられますし、樹が持つ貯蔵養分を利用しながら根の回復を待てる可能性が高いからです。
一方で、長期間かけて根詰まりや過湿によって衰弱してきた株であれば、私は葉を減らす判断をかなり慎重に行います。
その株に残された光合成能力や生理機能をさらに低下させる危険があるためです。
ここで重要なのは、慢性衰弱株だから必ず葉を残すという意味ではないことです。葉が極端に混み合っている場合や、病害の発生源になっている場合など、葉を整理した方が良いケースも当然あります。
ただし、そのような株では「弱っているから葉を減らそう」と短絡的に判断するのではなく、本当にそれが必要なのか慎重に考えるべきだと思います。
葉を見るのではなく根の歴史を見る
葉を取るか残すかで迷った時、多くの人は葉を見て判断します。
しかし私は葉だけで判断することはありません。
まず根を見る。
そして根が弱っていたなら、その原因を考える。
さらに、その根は昨日まで元気だったのか、それとも何か月もかけて少しずつ弱ってきたのかを考えます。
急性障害なのか。
慢性障害なのか。
葉を減らすか残すかの判断は、その違いから始まると私は考えています。
補足
葉を取り除くか残すかを決めているのは葉ではありません。
根です。
しかし本当に見るべきなのは、根の量でも色でもありません。
その根が「昨日今日急速に弱った根」なのか、「何か月もかけて弱ってきた根」なのかという根の歴史です。
その違いを理解すると、葉を取り除くべきかどうかの判断は驚くほど明確になります。

