質問:ネット通販で購入した苗木がものすごく不調に見える。なんとか復活させる方法は?
ネット通販で購入した苗木の調子がものすごく悪く見え、業者に交換を要求したが、同じ管理の苗木しかないと言われ、返品のみ受け付けると言われた。
しかし流通量が少ない珍しい品種なので、お金をドブに捨てる覚悟で、かつ枯れる前提で育てる決心をした。
状況は深刻で、大苗と言うものの背丈は1メートル弱。葉は薄緑から黄色に変色気味で、全体的に乾燥傾向も見られる。用土はピートモス単一用土。
植え替えのため根鉢を確認すると、6号ポリポット入りだったが周囲のピートモスにはほとんど根の張りがなく、ピートモスをどかすと核となるガチガチの根鉢が現れた。その根鉢サイズはおよそ4.5号程度であった。
さらに白根はほとんど見当たらず、確認できた根の多くは黒色から茶色であった。
販売時には「10月〜12月随時発送」と記載されていた。購入したのは8月初頭、到着したのは10月上旬。私の地域ではブルーベリーが本格的に成長できる期間は残り2〜3週間程度と考えている。
このような状態の苗木でも復活は可能なのか?
回答
結論から言うと復活の可能性はありますが、決して楽観できる状況ではありません。私個人としては極めて厳しい状態と判断しています。
このような苗木で重要なのは樹勢回復を目指すことではなく、まず無事に休眠へ入らせて春まで生存させることです。
成長を促すのはは二の次、まずは生存させることです。
回答の理由
まず最初にお断りしておきますが、これは実際に私が親木候補として某業者より購入したブルーベリー大苗をもとにした実例です。
業者名や品種名については伏せますが、実際に到着した苗木を確認し、根鉢を分解調査した結果と私自身の栽培経験をもとにまとめています。
また、ここで述べる内容は全て私個人の考察です。実際の育苗履歴や管理内容を確認したわけではありませんので断定ではありません。しかし、到着時の樹勢、葉色、根鉢構造、根色などを総合的に見れば、かなり高い確率で原因は絞り込めると考えています。
私が最初に違和感を覚えた理由
到着した苗木を見た最初の印象は、「大苗なのに生命感が薄い」というものでした。
葉は正常な紅葉ではなく薄緑から黄色に変色し、枝には乾燥した印象がありました。株全体を見ても勢いが感じられず、どこか無理をして立っているような印象を受けました。
しかし私は、このような症状を地上部だけの問題とは考えていません。
ブルーベリー栽培では、葉や枝に現れる異常の多くは根の異常が先に存在します。葉色の悪化も、樹勢低下も、枝の乾燥感も、まず根に原因を探るべきだと考えています。
さらに言えば、私は日常的にブルーベリー苗木の出荷判定を行っています。当ナーセリーでは独自の出荷基準を設け、その基準を満たした苗木のみを出荷しています。
当然ながら、出荷できる苗木と出荷できない苗木の両方を日々観察しています。
そのため今回到着した苗木を確認した際、強い違和感を覚えました。
率直に言えば、当ナーセリーの出荷基準に照らし合わせた場合、出荷対象にならないレベルの状態だったためです。
もちろん各生産者によって出荷基準は異なりますので、他社の基準を否定する意図はありませんが、自ら出荷可否を判断し続けている立場だからこそ、その苗木の状態の悪さが際立って見えました。
私は今回の苗木を見て単純に「元気がない」と感じたのではありません。葉色、枝の状態、根色、根鉢形成、その全てが当ナーセリーで出荷している苗木と比較して大きく見劣りしていたのです。
主原因は強固な根詰まりと根の機能低下だと判断した
根鉢を確認した結果、6号ポットの中に実質4.5号程度の硬い根鉢が存在していました。
一方で、その外側に存在する大量のピートモスにはほとんど根が伸びていませんでした。
つまり見た目は6号ポット苗ですが、実際には4.5号ポットのまま生きているような状態です。
さらに白根はほぼ確認できず、見える根のほとんどは黒色から茶色でした。
私はこの状況から、根詰まり苗が過湿状態を繰り返した結果として根の機能低下が発生していた可能性が高いと判断しました。
根が正常に機能していれば地上部はある程度の勢いを維持できます。しかし根が弱れば吸水能力は低下し、その結果として葉は黄化し、枝は乾燥感を帯びていきます。
今回見られた症状は、その流れと非常に整合性が高いように感じました。
私はかなり深刻な状態と判断しています。適切な措置を施さなければ、状態は改善するよりも悪化の一途をたどる可能性の方が高いと考えました。
なぜこうなったのかを推測してみる
ここから先は私の推測になります。
今回特に気になったのは、販売条件に記載されていた「10月〜12月随時発送」という条件でした。
まず、私が受け取ったのは10月上旬です。私の地域ではブルーベリーが積極的に成長できる期間は残り2〜3週間程度しかありません。
また、その苗木は外周用土へほとんど根が進出していなかったことから、比較的最近になって鉢増しされた可能性を考えました。
実際に確認したところ、6号ポット内部に存在していたのは4.5号程度の強固な根鉢であり、その周囲のピートモスには十分な発根が認められませんでした。
私はおそらく8月下旬から9月上旬頃に鉢増しされ、その後に外周用土へ根を伸ばす期間を設け、10〜12月の発送設定になっていた可能性を考えました。
もちろん実際の管理履歴は分かりませんので、これは一栽培者としての仮説です。少し話が外れますが、だとするとこの見せかけの鉢増しは、同じ栽培者の視点では、きつい言葉となりますが、率直に、悪質に映ってしまいます。すみません、言い方がきつくて。
地上部が大きい理由についての考察
今回の苗木は樹高だけを見るとそこそこの大きさのある苗木でした。
しかし私は地上部に対して根域が小さすぎるように感じました。
私の推測では、生育期間中に比較的多めの施肥が行われていた可能性があります。
肥料が十分に存在し、さらに毎日十分な潅水が行われていた環境では、ブルーベリーは短期間でも地上部を大きく成長させることができます。
通常であれば施肥量が増えれば塩類集積による障害も発生しやすくなります。しかし大量の潅水が継続されていれば余剰な肥料成分は下方へ流亡し、塩類集積が表面化しにくくなります。
夏場は蒸散量も非常に大きいため、多量の潅水管理が生育上の問題として現れなかった可能性もあります。
その結果として地上部だけは大きく成長した一方で、根は限られた空間の中で増殖を続け、硬く締まった根鉢コアを形成したのではないかと考えています。
植物は光合成で得た炭水化物を根の生長にも利用します。今回確認できたガチガチの根鉢も、その結果として形成されたものではないかと私は推測しています。
この苗木を私ならどう立て直すか
正直なところ、到着した状態のまま冬を迎えた場合、この苗木は冬越しに耐えられず枯死する可能性が高いと私は判断しました。
到着時点では枯死率50%程度と考えていましたが、実際に根鉢を確認した後はその見立てを修正しました。
私個人の見立てでは生存率30%前後、枯死率70%前後というかなり厳しい状況です。
もちろん科学的に算出した数値ではありません。しかしこれは長年ブルーベリー苗木を栽培し、根鉢の状態や樹勢を見続けてきた私自身の経験則に基づく判断です。
少なくとも私が普段管理している苗木群の中であれば、この状態は危険水域どころか危篤水域と判断し、苗木群から弾かれて、処分苗木置き場に移動させられている品質です。
私はここで樹勢回復を一端捨て、生存率向上に全振りした手法を用い、1%でも生存率を上げる目的とした管理に切り替えました。
根域環境を根本から作り直す
まず鉢はスリット鉢へ変更しました。
用土はピートモス、鹿沼土中粒、さらに通気性確保のための有機物資材を配合した当ナーセリー独自の混合用土です。
また、発根していない外周ピートモスは除去し、硬く締まった根鉢表面については盆栽用熊手を用いて軽く削りました。根鉢を削るたび、コチッ!コチッ!と硬い音がします。水を含んでいる根鉢がこんな音を放っているのは聞いたことがありません。
目的は根鉢を破壊することではありません。将来的に新しい根が根鉢の外へ伸びるための通路を作ることです。
今回の問題の本質は地上部ではなく根にあると判断したため、まずは根が呼吸できる環境を確保することを最優先にしました。
最も重要なのは根鉢を動かさないこと
植え付け後、私はすぐに潅水を行ったわけではありません。
まず先に3本の支柱を用いた合掌作りの固定法を行い、根鉢そのものを鉢内で完全にロックしました。
弱った根は揺れに非常に弱く、せっかく発生した新根も根鉢が動くだけで傷んでしまいます。
そのため、まず物理的に根鉢を固定することを優先しました。
その後、用土密着のために大量潅水を行いました。この潅水の目的は水分補給ではありません。根鉢と新しい用土を密着させることです。
十分な潅水を行うことで用土中の余分な空気が抜け、根鉢と周囲の用土が隙間なく接触します。さらに支柱も用土へ固定されるため、結果として根鉢・支柱・用土が一体化した安定状態を作ることができます。
私は植え替え直後の最も重要な作業は、この固定作業だと考えています。
剪定は一切しない
通常であれば地上部を切り戻して蒸散量を抑える考え方もあります。
しかし今回は一切剪定を行いませんでした。
理由は樹体内のホルモンバランスの変化を起こしたくなかったためです。
今必要なのは回復ではありません。
静かに休眠へ向かわせることです。
弱った樹にとって余計な刺激は必ずしもプラスになるとは限りません。今回はとにかくおとなしく冬へ向かわせる方針を採りました。
目標は回復ではなく現状維持
植え替え後は半日陰へ移動しました。
その後は可能な限り刺激を与えない管理へ切り替えます。
私の地域ではブルーベリーが積極的に成長できる期間は残り2〜3週間程度しかありません。
その短期間で樹勢回復を狙うことは現実的ではないと考えています。
目標はただ一つです。
これ以上悪化させないことです。
回復を目指すのではなく、まずは現状維持を目指す。そのまま無事に休眠へ入れれば第一段階成功と考えています。
本当の答えは春に出る
こうした苗木は秋には答えが出ません。
本当の結果が分かるのは翌春です。
冬を越え、花芽や葉芽が膨らみ始めるか。それが最初の判定基準になります。
芽が膨らみ、葉が展開し、新梢が少しでも動くのであれば、生き残る可能性があります。
逆に芽が動かない。枝の乾燥が進む。芽そのものが萎縮する。そのような状態であれば未来は極めて厳しいでしょう。
だから私は今、この苗木を回復させようとは思っていません。
まずは無事に冬を越させること。そして春に芽が動くこと。その二つだけを目標に管理しています。
補足
今回あらためて痛感したのは、ブルーベリー苗木の価値は樹高ではなく根で決まるということでした。
樹高1メートルの苗木よりも、健全な白根を持つ50cmの苗木の方が将来性に優れていることは珍しくありません。
通販で苗木を購入する際には、可能であれば葉や樹高だけでなく、根鉢の状態まで意識して判断することをおすすめします。
少なくとも私は、苗木を見る時に最初に見るのは葉ではありません。
根です。
苗木の未来は、見えない地下部によって決まると考えているからです。
最後に愚痴ります。この苗木は、約8千円もしたんです。めちゃ悔しい!はぁ、ため息もでない。。。
自分の育てた苗木と隣に比べて見比べてみた。やっぱり自分の苗、いいなぁ。本気でそう思いました。
はぁ。はっしぇんえん…(泣)
この苗木業者の(規制音規制音規制音)!ホントにぷんすかです。

