質問:ブルーベリー狩りでお客さんが収穫する樹は、実をたくさん付けるために管理を手抜きしていると聞いたことがありますが、本当なのでしょうか?
ブルーベリー栽培について勉強していると、「摘果をすると大粒になる」「過着果は樹勢を落とす」「適切な剪定が重要」といった話を目にします。
ところが観光農園へ行くと、枝が見えなくなるほど大量の果実を付けている樹を見かけることがあります。
本来なら摘果した方が品質向上につながるはずなのに、なぜそこまで果実を残しているのでしょうか。
交差枝や内向枝も剪定されずそのまま残っていたりしていました。
観光農園では、あえて管理を簡略化しているのでしょうか。また、どことは言えませんが関係者から摘み取り用の木と出荷用の樹を分けており、摘み取り用の樹にはたくさん実を付けるようにしていると聞いたこともあります。
回答
私もそうした考え方で管理している観光農園が存在するという話は聞いたことがあります。
ただし、それは単純な手抜きという表現では言葉足らずであり、その真は観光農園という事業形態における経営判断の結果である場合があります。
おそらく読者様が感じていらっしゃるのもそこに通じるものと思いますので、その視点にてお話します。
まず、観光農園は売上はもちろん利益も確保しなければなりません。
そのため、お客様に収穫してもらう樹については果実数を重視し、出荷用の樹については品質を重視するという管理方針を採る農園が存在しても何ら不思議ではありません。
逆に、お客様へ開放する樹に対しても摘果や剪定を丁寧に行っている農園は、非常に管理レベルの高い農園だと私は考えています。
回答の理由
まず前提として、観光農園と家庭栽培では目的が違います。
家庭栽培であれば、自分が美味しい果実を収穫できればよいため、摘果による品質向上や樹勢維持を優先できます。
しかし観光農園は事業です。
お客様に収穫体験を提供しながら、同時に売上と利益を確保しなければなりません。
そのため、栽培理論だけを追求した理想論が、そのまま経営上の最適解になるとは限らないのです。
摘果は品質向上に有効だが、果実数は明らかに減る
摘果を行えば、一果あたりに使える養分が増えます。
その結果、果実は大きくなり、品質向上も期待できます。
樹への負担軽減という意味でも有効な管理方法です。
しかし摘果には大きな欠点があります。
果実数が確実に減ることです。
さらに摘果作業には時間と人件費がかかります。つまり、経費がかかった上で果実数も減るという現象が起きます。
家庭栽培なら問題にならないことでも、観光農園では全く事情が変わります。
なぜなら、観光農園はお客様に果実を収穫してもらうことで成り立つビジネスだからです。
観光農園では「果実総量」が重要になる
市場出荷の場合は、一粒あたりの大きさや美しさなどの商品価値が重要です。
しかしブルーベリー狩りでは、お客様がどれだけ収穫できるかという要素も重要になります。
もし強く摘果して果実数を減らせば、一粒あたりの品質は上がります。
しかし、お客様が摘み取れる果実総量は減少します。
観光農園側から見ると、それは少し困った状況でもあります。
せっかく来園したお客様には十分に楽しんでもらいたいですし、お客様がたくさん食べても果実が足りなくならない状態を維持したいからです。
そのため、あえて摘果を強く行わず、自然のまま実をどっさりならせ、中小粒であっても果実数を確保するという判断が生まれることがあります。
出荷用と観光用で管理方針を分ける考え方
農園によっては、お客様に収穫してもらう樹と、出荷用果実を収穫する樹を分けて管理している場合があります。
出荷用の樹では、大粒化や品質向上による単価上昇が期待できます。
そのため、摘果や剪定に手間とコストをかける意味があります。
一方で、観光向けの樹では事情が違います。
品質向上のために果実数を減らすよりも、お客様が十分収穫できる果実量を確保する方が優先される場合があります。
その結果として、観光用の樹は中小粒果を大量に実らせる方向へ、出荷用の樹は大粒果を作る方向へと管理方針が分かれることがあります。
これは栽培技術の問題というより、むしろ経営判断の問題と言えるでしょう。
手抜きではなく、費用対効果を考えた判断とも言える
観光農園の経営者が摘果を行わないと聞くと、「管理が雑なのではないか」「手抜きではないか」と感じるかもしれません。
しかし実際には、品質向上による利益と、摘果にかかる人件費や果実数減少による不利益を比較した結果として、その判断を行っている場合があります。
つまり、摘果をしないことが必ずしも技術不足を意味するわけではありません。
むしろ、観光農園という事業形態においては合理的な判断として成立している場合もあります。
だからこそ本当に管理レベルの高い農園が見えてくる
ここで面白いのは逆の見方です。
もしお客様へ開放する樹に対しても、適切な摘果や剪定を行い、果実品質や樹勢維持まで重視している農園があるとしたら、その農園は収穫量だけではなく品質まで考えて経営していることになります。
経営だけを考えれば果実数を残した方が有利な場面もある中で、それでも品質向上のために手間をかけているわけです。
その意味では、お客様へ開放する樹の管理状況は、その農園がどこまで品質へこだわっているかを知るための一つの判断材料になるかもしれません。
そしておそらく、そのように摘み取り用の樹にまで摘果を施し開放している観光農園の料金は、単価が他の園に比べ高めに設定されていたり、摘み取り量の上限が決められていたり、細かい料金設定がなされている可能性があります。それはなぜかと言うと、上限なしの食べ放題ではこの形態では割に合わなくなるからです。
補足
この話の結論は、「観光農園の管理は雑だ」ということではありません。
観光農園には観光農園の利益構造があり、家庭栽培には無い経営上の判断というものが存在します。
その結果として、お客様に収穫してもらう樹では果実数を重視し、出荷用の樹では品質を重視するという管理方針が採用されるという流れであり、この判断に経営上の不自然さは感じられません。
一方で、お客様へ開放する樹にも摘果や剪定を施し、高品質な果実づくりを目指している農園もあります。
そのため、観光農園を見る際には単純に実の数だけを見るのではなく、「なぜその樹にその量の果実が付いているのか」という視点を持つと、その農園の考え方や管理方針が見えてくるかもしれません。
これはあくまで私の考えですが。
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